研究課題/領域番号 |
22K20020
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
鈴木 啓峻 大阪大学, 大学院人文学研究科(言語文化学専攻), 講師 (50966546)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | 人間性 / 第一次世界大戦 |
研究実績の概要 |
本研究課題「ヴァイマル期の文学と哲学的人間学における〈共感〉の諸相----マンとシェーラーの比較」は、第一次世界大戦によって「人間性」の位置付けが動揺させられたヴァイマル期における、トーマス・マンの文学とシェーラーの哲学的人間学を比較する試みである。この視点からの比較を行うにあたって、2022年度は主に、戦後におけるマンの側の状況を分析した。具体的には、敗戦間近の1918年に執筆された自伝的作品『主人と犬』(1919)における「人間」と「犬」の関係が「牧歌」と「狩猟」というモチーフを通してどのように描かれているかを考察した。結果、この作品には、戦争からの逃避という意味での「牧歌」という表層の下に、人間の中に存在する獣性と、動物である犬の中に存在するそれの関係を描くことを通して、「人間性」の位置付けを再び模索するという目的があることが明らかになった。以上の考察を、2023年3月にオイフォリオーンの会第94回研究会において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本課題は、トーマス・マンとマックス・シェーラー二者の比較を目的としている。2022年度は、これまでの研究の継続の上にマンについて多く分析してきたが、シェーラーについての研究があまり進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究としては、比較研究としての本課題の目的をさらに深められるよう、マンだけでなく、第一次世界大戦からヴァイマル期にかけてのシェーラーの著作にも積極的にあたり、両者の共通点と相違点を見出す予定である。その結果を口頭発表と論文の形で発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
比較研究において、2022年度は一方の比較対象であるシェーラー関連の文献をあまり購入することができず、次年度使用額が生じた。2023年度も前年度に引き続き、トーマス・マンとマックス・シェーラーに関する書籍、文献を中心に物品の購入に充てる予定です。
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