本研究では、仮名の含まれる奈良時代のテキストをめぐって、記述される意味内容およびそのテキストが受信・享受されるシチュエーションを検討したうえで、テキストに現れる文字・表記の様相との関連性を考察した。(1)唐招提寺文書「家屋資財請返解案」をめぐっては、記載される内容と表記スタイルとの関連性を明らかにした。(2)上代特殊仮名遣いの「違例」をめぐっては、表記上における「違例」の現れ方と、各文献の享受のされ方との関連を考察した。紙の文書および、出土資料としての木簡、石に歌が刻まれた仏足石歌、編纂されたものとしての万葉集をめぐって、文字・表記から「資料性」を記述した。
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