研究課題/領域番号 |
22K20035
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
ANDASSOVA Maral 早稲田大学, 高等研究所, 講師(任期付) (80962076)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | 『出雲国風土記』 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は〈間テクスト性〉の側から『古事記』、『日本書紀』、『出雲国風土記』、『出雲国造神賀詞』を解読することによって、『出雲国風土記』に対して新たな解釈と方法を導き出すことにある。2022年度は出雲国造の祖神であるアメノホヒに注目し、『古事記』、『日本書紀』におけるその出自・活躍にかかわる神話を分析した上で、『出雲国風土記』および『出雲国造神賀詞』にみるその神格の変貌をとらえた。この成果に関して2022年10月1日に古代文学会において研究発表を行った(テーマ:「出雲国造の祖神-なぜ『出雲国風土記』はアメノホヒを語らないのか」)。さらに、「出雲国風土記における「天の御飯田」、「天の御領田」をよむ」(『日本文学』72号、2023年2月)の論文においてオホナムチの領地である「田」に関する記述に注目し、『日本書紀』から『出雲国風土記』における田への意味づけの変成をとらえた。それによって、『出雲国風土記』は『日本書紀』の影響を受けつつも、出雲国造の独自な主張を込めたテクストであることがみてとれた。 上記をまとめると次のような研究実績となる。 【学会発表】 2022年10月1日 古代文学会例会における研究発表 テーマ:「出雲国造の祖神-なぜ『出雲国風土記』はアメノホヒを語らないのか」 【論文】 「出雲国風土記における「天の御飯田」、「天の御領田」をよむ」、『日本文学』、日本文学協会、72号、2023年2月
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はおおむね順調に進展しているといえる。研究課題がスタートした当初から予定していた活動、すなわち文献調査、学会参加・学術交流、現地調査などを全部実現できている。
1.文献調査:早稲田大学図書館、国立国会図書館、国文学研究資料館などの国内の諸施設において、『古事記』、『日本書紀』、『風土記』、『出雲国造神賀詞』などに関する研究の最新情報を収集した。 2. 学会参加・学術交流、学内および学外の研究会への参加:早稲田大学高等研究所、文学学術院、人間科学学術院における研究会に参加し、学術的交流を行った。古代文学関連の諸学会、すなわち、古事記学会、上代文学会、古代文学会などに参加し、各学会・研究会の研究者との学術的交流を行った。 3. 現地調査:島根県にある出雲市と松江市を訪問し、出雲大社をはじめとして、出雲国風土記い登場する土地・神社をめぐり、調査を行った。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は出雲国造とその祭祀へのかかわりを明らかにし、各テクストにおけるオホナムチの位置づけについて考察を進めたい。そのために、『古事記』、『日本書紀』、『出雲国風土記』におけるオホナムチの神格を解明し、その相違について検討する。さらに、『出雲国造神賀詞』にみえる出雲国造の祖神アメノホヒ、祭神のオホナムチの位置づけを行い、大和朝廷とのかかわりにおける出雲国造神賀詞奏上儀礼の意義について検討する。本年度の目標を達成するためには引き続き文献調査、学会参加・学術交流、テクストの解読・分析、研究成果の学会発表・論文化を行う予定である。 2023年度は次の題目の論文の投稿を予定している:①『古代文学』へ論文投稿予定、テーマ:「出雲国造の祖神アメノホヒ―古事記から出雲国造神賀詞へ」。②『日本文学』へ論文投稿予定、テーマ: 「出雲国造神賀詞における「奏賜久登奏」について」。③“Asian Studies(アジア研究)”( Ljubljana University Press)(Scopus) へ論文投稿予定、テーマ:「日本古代文学テクストにおけるオホクニヌシと出雲」 2023年度は次の内容の研究発表を予定している:①日本文学協会研究発表大会発表、テーマ:「出雲国造神賀詞における「白賜久登奏」について」(2023年7月)、②ヴェネツィア、カフォスカリ大学における国際会議で発表、テーマ:「出雲国造の祭祀と神話-『出雲国風土記』と『出雲国造神賀詞』の分析をとおして」(2023年10月)。③ハイデルベルグ大学発表、テーマ:「日本古代神話における出雲について」(2023年11月)。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は海外への渡航が難しく、申請した当初予定していた国際会議への参加ができなかったため、次年度使用額が生じた。 2023年度は海外での国際会議での発表・参加を2回予定しており、そのために使用する予定である。
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