本研究は、国際関係における民主主義のアイデアについて国際関係史および思想史の文脈から分析を試みたものである。1920年の国際連盟の創設によって、国際社会ではじめて民主主義が普遍的価値として支持されるようになった。これまで、国際関係における民主主義についての研究の多くは、民主主義は誰もが肯定的に認めるべき普遍的価値である、という考え方を前提として進められてきた。しかし、そのような前提に基づいたアプローチでは、民主主義の概念がどのように国際社会で核となる概念とされ、同時に国際政治において利用されたのかについて、十分な歴史学的説明がなされないといえる。
以上のことを明らかにするため、本研究では、各国の資料館に保存されている個人文書や外交資料を分析し、民主主義がどのように普遍的な国際的価値とされるようになっていったのかを明らかした。とくに2023年度は、これまでスイスやアメリカで収集した史料の読解とともに、イギリスのオックスフォードの史料館を中心に、とくに1930年代から第二次世界大戦中までのの国際連盟関連史料を収集した。また、5月にはカナダのウォータールー大学において開催された国際関係史ワークショップに招待され、戦間期の国際政治に関して多くの専門家らと意見交換を行った。
本研究成果の一部は、8月にInternational History Reviewから学術論文として出版されており、おおむね研究計画に沿った進捗であったといえる。
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