本研究では、1870年代の開港がベトナムの交易秩序にもたらした変化を、ベトナム・フランス両国の公文書館に所蔵されている未公刊史料から分析した。その結果、開港後も対外交易における華人の優位性は揺らがなかったこと、またフランスが対外交易を開港場に集中させるべく、非開港場での在来交易に強く干渉していた事実が明らかになった。このほか開港場に設置された海関の収支状況や、海関運営に携わっていたベトナム人キリスト教徒の存在にも光を充てることができた。さらに開港後ハイフォンに日本銅が輸入されていた事実を発掘し、開港がアジア間貿易の活性化に繋がっていたことを示した。
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