国内調査しか行えなかった2022年度と異なり、2023年度は国外での発表と調査を達成できた。 6月にはカナダで開かれた国際メディア史学会IAMHIST (International Association for Media and History) Conference 2023 “FUTURE [of] ARCHIVES” にて、5カ国のラジオ・アーカイブについて議論するパネルに登壇し、NHKアーカイブスの活用方法について口頭発表した。9月には、アメリカ議会図書館、アメリカ国立公文書記録管理局( Moving Image & Sound division )、メリーランド大学図書館(プランゲ文庫、the Mass Media & Culture Collections)にて、日米民衆の声を捉えた音源を調査し、実際に聴取を行えた。滞在期間が短かったため、所蔵状況確認が主たる目的であったが、来年度以降の調査と研究発表の目処をつけられたことは進展であった。加えて、メディア研究の国際的ネットワーク構築もでき、2025年度の日本本放送100周年国際学会企画・運営実現に向け、大きな収穫を得た。 資料調査にとどまらず、研究成果発表として、10月には「日米放送貫戦史」描出の足掛かりとなる論考を、2022年夏に開催された韓国・翰林大学日本学研究所主催国際学会叢書の一章として、韓国語で発表できた。2022年度沖縄資料調査の成果も取り入れた同論考発表により、「日米放送貫戦史」についての論文発表を継続していく出発点を作ることができた。 なお、国内では、8月に作家・柳美里主催「常磐線舞台芸術祭」に参加し、「ラジオと文学」をめぐる研究の可能性と、その社会的訴求力を考える貴重な機会を得た。アーカイブ調査に加え、文学研究とメディア研究の架橋にも尽力することで、今後も「貫戦史」研究を深化する礎を構築できた。
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