本研究を通じて、イタリアとスペインにて2週間にわたる文献史料を調査し、これまで曖昧に認識されてきた前近代地中海世界における海上権力の在り方をめぐって、シチリア(島)王国やマジョルカ王国などの島国による海域政策を分析した。その結果、同国家による海上リスクと海上保安の政治利用を明らかにし、島国特有の権力構築の一端を解明した。国際シンポジウムにて当該成果を報告し、そこでの議論の中から、その時代の海上リスクにまつわる法思想的な背景を明らかにするという、新たな課題を得ることができた。本課題を解決することによって、「海域国家」の在り方をより鮮明に描くことができるだろう。
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