本年度も前年度から引き続いて、寺沢広高及び大谷吉継の発給文書の収集を行うとともに、増田長盛などのいわゆる五奉行や、木下吉隆などの豊臣奉行の発給文書の収集にもつとめた。関連する調査として下記の史料所蔵機関を訪問した。 長崎歴史文化博物館・佐賀県立博物館・添田町役場・福岡市博物館・高知城歴史博物館・久留米文化財収蔵館・熊本博物館・広島県立文書館・山口県文書館・大阪城天守閣ほか 特に、添田町役場においては、原本調査を行うことによって先行研究において間違った日付で認識されていた大谷吉継書状に関して発給日の訂正が可能となった。また、上記の調査の成果を用いて研究報告「豊臣奉行発給文書の基礎的研究」(第26回大手前比較文化学会、2023年)を実施した。ここでは大谷吉継が用いた通称や実名の変化、そして花押の変遷などに関して新たな知見を提示することができた。特に従来は後世の捏造と想定されていた吉継による吉隆の実名使用の可能性を指摘した。さらに、調査の成果によって従来知られていない新出の大谷吉継書状を見出し、その内容を紹介した。 なお、大谷吉継の発給文書の大半を収集することができたが、寺沢広高に関しては集めきることができず、課題として残った。また、当初の目的であった豊臣奉行が不在時における知行地支配の分析については未着手であり課題として残った。調査によって収集した古文書の分析も継続して取り組みたいと考えている。
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