2022年度に引き続き、研究実施計画に基づいて、(1)「危機」に関する理論的整理と、(2)「危機」に関する事例研究として、北東北各地でのフィールドワークや資料調査を行った。 (1)については、引き続き国立国会図書館等での文献渉猟や学会等への出席によって情報収集を進めたほか、「危機」の民俗学構築において学史的にその業績を再検討すべき研究者として、山口弥一郎に加えて橋浦泰雄や守随一が浮上したため、2024年2月に橋浦泰雄関係文書を所蔵する鳥取県立図書館において資料調査を実施した。 (2)については、2022年度に引き続き、津波や凶作などの「危機」と向き合ってきた北東北各地でフィールドワークを行った。2023年4月には青森県三沢市で現地事情に詳しい調査協力者とともにフィールドワークを行ったほか、2023年5月には岩手県大船渡市でのフィールドワーク、そして2023年9月には焼畑経験者からの聞き書きが可能であると新たに判明した秋田県東成瀬村でフィールドワークを行った。 上記のような調査に加え、最終年度となる本年度は調査成果のアウトプットにも注力し、単著査読付き論文「「危機」とともに暮らすこと―陸前高田市小友町只出集落の災害史―」が2024年3月に『現代民俗学研究』誌に掲載された。また、人口減少等の現代的な地域社会の危機(地域課題)に立ち向かいうる主体として地域シンクタンクに着目し、2023年7月には地域シンクタンクに関する有識者を招聘した研究会を開催し、本研究の成果を社会実践につなげる上で非常に参考となる示唆を得た。
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