今後の研究の推進方策 |
第一に、2022年度に収集した文献や広告、パンフレットなどの資料の言説分析を進めていく。それと平行して、労働者のモビリティに関する日本語・英語文献を読み込み、研究全体を貫く論点を明確化したい。 第二に、昨年度の聞き取りデータを分析し、論文化していく。特に注目したいのは、パンデミックの影響から、労働者の能力や振る舞いなどが数値・映像データ化され即座に日本に送られ、採用プロセスにおけるブラジル法人の採用者の裁量は減少する一方、日本企業側からの細かい希望や判断が即日採用行動に反映されるようになっていたという点である。このような状況下で、派遣会社や旅行社は、外見や話し方など労働者のふるまいを厳しく審査していた。こうした送り出し事業の機械化が、企業に対する営業・労働者に対する求人のためのイメージ戦略とどのように結びついているのかを今後考察したい。その際、Findlay, A., McCollum, D., Shubin, S. Apsite, E. and Krisjane, Z.らの「よい移民」の生産に関する考察が手がかりになると考えている。 第三に、上記したブラジル調査の結果および考察をふまえて、日本側の派遣会社およびその派遣先となる企業に対する聞き取りを実施する。具体的には、デカセギ送り出しの変化が、日本法人や取引先企業のいかなる事業展開と結びついていたのか、さらに、派遣会社ブラジル法人が生み出した労働者のイメージや現実の労働者のふるまいを彼らがいかに評価しているのかを調査する予定である。
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