「自治研究」公表の論文は、災害ないし災害概念は社会的構成物であるという考え方を前提として、日本及び韓国における法律上の災害概念の変遷を通じて、両者の構造的相違を確認することを目指したものである (昨年度執筆した原稿を、今年度軽微な修正を加えて公表した ) 口頭発表①では、韓国法における「受理を要する申告」概念について日本法と比較した。申告(日本法の「届出」に相当)は、受理の要否によって二種類に分けられる。「受理を要しない申告」が本来の意味の申告であり、「自己完結的申告」とも呼ぶ。「受理を要する申告」は 申告だけでは効力が発生せず、行政庁の受理行為があって初めてその効力が発生するものである。本報告は、韓国で「受理を要する申告」概念が必要になった背景を分析し、「受理」に対する日韓の概念を比較し、そして日本の法令・判例にも届出制と許可制の二分的区分に完全には合わない事例があることを指摘した。 韓国は日本よりも公用収用 制度を活発に活用し、例えば民間企業(私人)の高級ゴルフ場の設置のために収用を認めた例がある。口頭発表②では、許認可等がある場合収用法上の事業認定があるものとみなす個別法上の「事業認定擬制」という制度が公用収用をしやすくしていることに特に注目して報告した。2018年収用法改正では、事業認定擬制に対する制度的補完として許認可権者と中央土地収用委員会の協議等を定めたが、その内容と協議の法的性格も分析した。 <研究期間全体を通じて実施した研究の成果> 災害が何かは固定的なものではなく、どのような現象を災害として扱うかは、文化や社会システムの違いが反映される。日本と韓国における災害概念の分析を通じて、韓国における人為災害の法化による災害概念の拡張は災害概念の量的変化の例であり、災害を平時からの問題と扱う日本における災害の平時化は災害概念の質的変化の例であることを示した。
|