本研究は、気候変動問題に対する人権アプローチが、国際交渉の公衆参加態様の改変に与えたインパクトという、従来着目されていなかった人権問題の顕現化と公衆参加態様の変化の関係に焦点を当ててきた。 最終年度は、途上国による森林保全管理制度REDD+に着目した。REDD+実施による先住民族の土地・文化に対する権利への影響に伴う、気候変動枠組条約体制におけるコンスティチューエンシー制度をはじめとするプラットフォーム創設といった意思決定過程への参加強化の変化等、人権課題顕出と公衆参加態様変化との相関関係を明らかにした。2023年11月にはアジア太平洋地域気候ウィーク(マレーシア)へ参加し、土地権をはじめとする先住民族の人権課題や、彼らを国際的意思決定過程に参加させる条件に関する課題を始め、気候変動に連関する人権問題の実態把握も行った。調査結果に関して、同年12月、成蹊大学アジア太平洋研究センターのニューズレターに投稿した。また、同センターの『アジア太平洋研究』に掲載予定の論文を執筆中である(2024年9月提出予定)。REDD+の分析内容は、2025年に法律文化社から出版予定の国際法テキストとしても著した(2024年5月執筆完了)。 研究期間全体を通じて、2000年代以降の気候変動問題に連関する人権問題の顕現化が、国際交渉における非国家主体の参加・透明性確保に対して与えた影響の存在を明らかにした。成果は、2023年12月出版の『国家平等の形成と課題』としてまとめた(研究成果公開促進費)。研究を通じて、地域的国際組織による気候変動政策の国際法学的分析課題を析出し、経済・地理・文化的特性に着目したグローバル・地域条約の形成・運用課題と組織間の政策の異同を解明し、国際気候変動法の体系化と国際的共有課題の明確化への貢献を目指す新たな課題を具体化した(若手研究)。
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