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2022 年度 実施状況報告書

理解度向上に向けた身体拘束中の被疑者に対する権利告知制度の学際的分析

研究課題

研究課題/領域番号 22K20101
研究機関愛知学院大学

研究代表者

大角 洋平  愛知学院大学, 法学部, 講師 (10923542)

研究期間 (年度) 2022-08-31 – 2024-03-31
キーワード黙秘権 / 心理学 / ゲーム理論
研究実績の概要

【研究成果の具体的内容】本研究は被疑者に対する権利告知制度の機能や被疑者の権利理解度の法的位置付けを検討している。本年度では、(1)権利告知制度の機能につき、取調べという場面を被疑者と取調官との戦略的状況とみなすことにより検討を深めた。戦略的状況下では、取調前に被疑者に告知すべき内容は豊富になりうるとした。さらに、(2)権利告知が充実しているアメリカ法を参照し、被疑者の権利理解度の測定方法を調査した。アメリカでは権利理解度を測定する標準的手法が学際的見地から開発が行われている。日本が学ぶ点は多いものの、権利を理解しているという事情が法的にいかなる位置づけを有するのかが未だ解明されていないことを指摘した。
【意義】学説上、黙秘権の不告知の違法性は軽微なものと認識されていたが、その認識の妥当性を検証することに繋がる。また、先行研究では権利理解度の法的位置付けは充分検討されておらず、未解明領域の発掘に繋がったと思われる。
【重要性】今後、取調べという制度はより複雑なものとなりうる。それは、様々な状況に即した取調べを実現することを可能とする一方、被疑者に対して要求される理解能力の引き上げを意味する。しかし、被疑者が自身の有する権利や自らを取り巻く環境・制度について十分な理解を得ていない場合、制度が期待するメカニズムがうまく作動しない恐れがある。今後、供述採取制度はより一層展開されることが予想されるが、本研究はそのような制度が機能不全に陥った場合の応対を考える基礎的作業にも繋がっていると思われる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

現行法に関する調査や、取調べの戦略的状況についての検討は済んでいる。またアメリカにおける権利理解度調査についても概ね順調に進んでいる。研究成果の一部は、研究会等において報告を行っており、論文での公表準備も進めている。

今後の研究の推進方策

アメリカにおける権利理解度の調査方法については、いくつかの流儀があるように思われるため、その点についての深掘りを行っていく予定である。また、権利理解度が法的にはいかなる位置づけを有しているのかについて、自白の証拠能力や訴訟能力との関係で分析を行っていく。

次年度使用額が生じた理由

学会報告や研究の打ち合わせがオンライン開催になった関係で旅費に関する支出が抑えられたため、予定よりも少額に収まった。研究遂行上、必要であったスキャナーが購入できていないため、次年度はスキャナー購入代金に充てる予定である。また、前年度の研究会において、若手研究者との交流を深めることができたため、今後は同世代の研究者と研究会を開くことが考えられる。その際の旅費に利用したい。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] 論文解説「身元保証団体への補助金と保釈制度の危機―John F. Duffy & Richard M. Hynes, Asymmetric Subsidies and the Bail Crisis, 88 U. CHI. L. REV. 1285-360(2021))2023

    • 著者名/発表者名
      大角洋平
    • 雑誌名

      アメリカ法

      巻: 2022年2月号 ページ: -

  • [雑誌論文] 身体拘束中の被疑者に対する取調べ前の権利告知制度の機能的分析2022

    • 著者名/発表者名
      大角洋平
    • 雑誌名

      判例時報

      巻: 2535 ページ: 15-28

    • 査読あり
  • [学会発表] 黙秘権告知の機能と不告知の違法性2023

    • 著者名/発表者名
      大角洋平
    • 学会等名
      愛知学院大学法学・政治学研究会
  • [学会発表] 黙秘権告知の機能とアメリカにおける知悉性・理知性に関する調査方法について2023

    • 著者名/発表者名
      大角洋平
    • 学会等名
      京都刑事訴訟法研究会
  • [学会発表] 黙秘権の機能的分析2022

    • 著者名/発表者名
      大角洋平
    • 学会等名
      2022年度第1回日本刑法学会名古屋部会

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公開日: 2023-12-25  

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