研究課題/領域番号 |
22K20105
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研究機関 | 桃山学院大学 |
研究代表者 |
松本 未希子 桃山学院大学, 法学部, 講師 (00961343)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | 行政法 / 中国法 / 法人 / 国家法人説 / 公法私法二元論 |
研究実績の概要 |
本研究は、中国の地域自治組織である居民委員会及び村民委員会の法人化が両委員会の自治の保障に対していかなる意義を有するかを探求するものである。中国では、法人はもっぱら民事法の概念とされ、行政法や公法上の法関係では法人が観念されない。そうした中、本研究では、中国における行政活動の責任主体の議論が法人概念の影響を受けているとみられることに着目し、法人の行政法的意義を検討する。 2022年度は、中国で法人がもっぱら民事法の概念とされている理論的背景を明らかにするため、1986年の民法通則制定時の議論やそれ以前の学説状況、ソ連社会主義法学からの影響などを文献資料に基づいて検討した。しかし、いずれの資料からも決定的な論拠は見い出すことはできず、現時点では未だ理論的背景を明らかにすることはできていない。もっとも、資料の中にはドイツや日本における国家法人説について検討した上で中国法の独自性について述べるものが見られ、中国で法人がもっぱら民事法の概念とされているのは単なる偶然ではなく、積極的な選択に基づいたものであるという手がかりは得ることができた。これを受け、2023年度は、中国の行政法学ないし公法学における国家法人説の受容と拒絶に着目して、引き続き検討を行っていきたいと考えている。 また、近年、中国の行政法学では、行政基本法の制定や行政法の法典化をめぐる議論が活発化している。このような動きは、中国における行政法ないし公法の民事法に対する特殊性を表面化させるものでもあるため、本研究の検討に値する。そこで、本研究では、日本では批判の対象とされてきた公法私法二元論について、中国ではむしろ公法私法の間の線引きの必要性が強調されている点に着目して、その歴史的・理論的背景の考察を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
中国のデータベースの利用条件の厳格化により、予定していたよりも中国法に関する資料の収集が困難な状況にある。また、新型コロナウイルスの影響で中国現地での資料収集も行えなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、第一に、中国の行政法学ないし公法学における国家法人説の受容と拒絶に着目して、中国行政法学における法人の意義について検討する。また、第二に、第一の検討を踏まえた上で、法人が現実には国からの分節の意味を持っているのではないかという仮説を、種々の制度や裁判例における法院の思考を分析することによって検証し、居民委員会及び村民委員会が法人化された意義について考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で、海外での現地調査が行えず、国内でも研究会が中止されるなどして、予定していた旅費の支出がなかった。今年度は、昨年度行えなかった海外での現地調査を行うとともに、中国法関連のデータベースを新たに契約して、主として文献を収集するために研究費を用いる。
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