2022年度は、当初の研究計画書に基づき、マキァヴェッリやその他人文主義者に関する関連史料(一次文献、二次文献を含む)の収集と読解を進めた。論文執筆に必要な一次史料の一部に関しては、翻訳と注釈の作成を行った。一例として、ジョバンニ・ポンターノ『君主についてDe principe』の読解を行う際に、Guido Capelliによる校訂版史料の注釈等を参照することで、本研究の遂行に必要な他の文献(ポンターノであれば、『ナポリの戦争についてDe bello neapolitaneo』など)の収集や読解に繋げることができた。マキァヴェッリに関連する史料としては、Giovan Giacomo Penni『教皇レオ十世の選出と即位のためにローマで行われた、荘厳で名誉ある行進に関する年代記 Croniche delle magnifiche et honorate pompe fatte in Roma per la creatione et incoronatione di Papa Leone X』を回収し、読解を進める段階に達することができた。2022年度内に刊行された最新の校訂版『君主論』における注釈やBarthas(2019)の研究成果も活用しつつ、上記の史料の分析を進めている。この史料中には、教皇レオ10世をモーゼに擬える記述(「まるでモーゼのようにTAMQUAM MOYSES」)も散見される。加えて、イタリアにおける平和の回復者、有徳さを身に着けた運命の支配者として表現される記述も見いだせる(「教皇レオ10世、すなわち最も幸福なる平和の回復者LEONI X. PONT.MAX. PACIS RESTITUTORI FELICISSMO」等)。現状では、教皇と『君主論』の関係性を議論する際の手がかりとして、この史料を活用できるか否か、できる場合はどのように活用すべきかを考察する作業を進めている。こうした教皇評価は、『ディスコルシ』等の教会批判とどのような関係に立つのかも、考察対象にしたい。
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