研究実績の概要 |
2023年度は(i)在外研究の実施, (ii)国際学会への参加, (iii)共著書の刊行、の三点から研究活動を遂行した。 (i)2023年9月以降、イタリア(フィレンツェ大学)で在外研究を実施した。主な目的は、本研究課題に関連した史料収集及び文書館の利用である。例えば、1300年代後半から1400年代初頭のフィレンツェ書記官(コルッチョ・サルターティやレオナルド・ブルーニ)が作成した外交書簡の収集を行った(Archivio di Stato di Firenze, Biblioteca Riccardiana di Firezeを訪問)。当該史料の分析を通じて、1300年代後半から1400年代初頭のフィレンツェ書記局は引き続き教皇党的な自己規定(教会との親密な関係性をアピールする外交上のプロパガンダ)を継続的に使用し続けていた点、教会大分裂の解決を目指して奔走し続けていた点等が浮き彫りになった。H.バロン以降一般的となった通説においては、教会とフィレンツェの軍事衝突が発生した八聖人戦争(1375-78)以降、フィレンツェ書記局は教皇党的な言説を使用しなくなり始めると整理されがちだが、2024年現在では、その見通しには一定の修正が必要だと考えられる。なお在外研究中、マキァヴェッリや他書記官の直筆草稿を分析する手法に関してレクチャーを受けた(Luca Boschetto, Francesco Bausi)。 (ii)2023年度は二つの国際学会(International Machiavelli Society, Renaissance society of America)に報告者として参加した。(i)の研究内容を含めて、英語圏・イタリア語圏の研究者から、有益な示唆を受けることができた。 (iii)国内での研究成果として、『マキァヴェッリと宗教』と題された共著書を出版した。
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