一般的に「我々」対「彼ら」像の構築はポピュリストの営みとされる。だが、既存体制側に位置するEUも他者化を試みていることが本研究により明らかにされた。このような境界線策定は極右勢力の台頭に影響され急速に進んだことも示された。先行研究で主に検討されてきた上からの「ヨーロッパ人」像の構築過程とは異なる動きが確認できたことから、新たな「我々」像の策定に関するEUの動機を捉える研究への発展が期待できる。 さらに、新しい「我々」像の構築に際し、EUが政治的マイノリティに対して高い関心を寄せていることも明らかとなった。EUによるそうした者の声の汲み取り方について市民が注視する必要性を本研究は示している。
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