最終年度である本年度は、これまでの研究に引き続き、一次文献や二次文献を利用して、日本における「多文化共生」概念がどのように日本の難民政策に影響を及ぼしてきたのかについて、シリア、アフガニスタン、ウクライナ難民問題を事例に検討を実施した。そこでは、草の根的な文化的ファシリテーターの存在が「多文化共生」概念の拡大に貢献してきた歴史的経緯を論じた。この内容について、7月に開催された立命館大学立命館アジア・日本研究所主催の国際シンポジウムと、8月にドイツのハンブルク大学で開催されたThe Migration Conference 2023において計2回の英語での研究発表を実施した。 さらに、ドイツにおいてムスリム系移民・難民に対する宗教教育に関するフィールド調査を行った。その調査をもとに、12月に立命館アジア太平洋大学で開催されたAsia Pacific Conference 2023において、シリア難民の宗教教育に関する欧州の事例について英語での研究発表を実施した。 研究期間全体を通じて、日本および欧州(とりわけドイツ)における「多文化主義」と「多文化共生」の概念について検討を加え、それぞれの移民・難民政策について論じた。また、受入社会の中で難民の生存基盤を支援する文化的ファシリテーターの役割について、とくに宗教教育の観点から研究を進めた。 今後はこれらの成果を論文において発表する予定である。また、宗教教育や母語教育を中心に日本とドイツにおける受け入れ社会の果たす役割について、さらに研究を進めていく。
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