最終年度では、新型コロナウィルス感染拡大が食品サプライチェーンにおいて外食企業の川上に位置する企業群の経営状況に与える経済的影響を定量的に分析した。企業別の与信データおよび取引データ(東京商工リサーチ「TSR企業情報ファイル」;同「TSR企業相関ファイル」)を利用し、2020年から2022年(新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく緊急事態宣言の発出のあった)決算期において、レストランやバー等を主業とする企業と直接あるいは他の企業を介して間接に取引のある企業群を抽出した。両企業群の平均売上額はいずれも回復しているが、回復率については、直接取引のある企業の方が、同地域・同産業の制御群と比べて10%ポイント程度高いことが分かった。しかしながら、2021年以降に1か月以上の緊急事態宣言があった地域の企業では0.04%ポイント低く、その中でも直接取引のある企業では制御群と比べて3.5%ポイント低いことが明らかとなった。したがって、少なくとも2022年までは緊急事態宣言による余波が残り、外食企業と直接取引のある企業群は景気低迷から完全には抜け出していないことが示唆された。 前年度では、新型コロナウィルス感染拡大前の産業連関表(総務省「平成27年(2015年)産業連関表」;経済産業省「平成17年(2005年)地域間産業連関表」)を利用し、外食産業の最終需要の減少(2020年度の対前年度比)が食品製造業等のサプライチェーンの川上に位置する産業に与える波及効果を推計した。これは、感染拡大期の産業構造を反映した2020年産業連関表は作成中であることから2015年表を用いた予測であったが、上記の企業レベルのミクロデータにより、概ね実態と整合的であることが検証された。
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