研究実績の概要 |
昨年度は、経営者による純利益予想と当期純利益の差を用いて、経営者の自信過剰を測定し、リーマンショックによって自信過剰な経営者の経営行動が変化するかどうかについてアーカイバルデータを用いて検証した。また、日本の経済の特性を考慮し、メインバンクシステムが自信過剰な経営者の積極的な経営行動を抑制するかどうかについても検証した。この研究結果は、2022年6月に発行されたJournal of Asian Finance, Economics and Businessの9号6巻にて発表されている。 本年度は昨年度に得られた知見を活かして日本の伝統的なコーポレートガバナンスの有効性の検証を進めた。本年度の研究として取り組んだのはゾンビ企業の経営行動がコーポレートガバナンスによって改善されるかどうかである。本研究ではすべての利害関係者を重視し、日本の伝統的なコーポレートガバナンスである銀行と株主の利害を重視する外国人株主がそれぞれ日本のゾンビ企業を効率化することができるかを検証した。本研究の研究結果は外国人株主のみがゾンビ企業を効率化させた反面、銀行がゾンビ企業を効率化させるかどうかはわからなかった。そのため、銀行によるゾンビ企業の効率化は研究成果として発表せずに今後の課題としている。また、本研究では、利益の質によってコーポレートガバナンス組織による企業の効率化がより強くなるかどうかを検証したが、この研究結果も外国人株主のみが有効であった。以上の研究結果は2024年1月にAsian Review of Accountingに受理された論文にて発表されている。
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