本研究課題は、パネルデータを用いて経済主体間の波及効果とその連関構造がどのように変化し ているかを捕捉する計量経済学の手法の開発を目的とする。どの経済主体がどの経済主体に影響をあたえるのかという波及効果の連関構造が未知であり、さらにそれらが未知の構造変化点において変化する状況を考える。波及効果とその連関構造そして構造変化点を推定する手法を機械学習の手法を発展させることで開発し、漸近理論とシミュレーションによって、その性質を調べる。 まず、連関構造と構造変化の推定法を開発した。連関構造が疎である場合に有用な手法である、LASSOを元にした手法を提案した。提案する手法は、3段階推定量である。LASSOを一回適用するだけでは、推定量が望ましい性質をもたない。そこで、LASSO推定量を一段階目とし、構造変化点を最小二乗法で再推定する第二段階をおく。さらに、第三段階として、連関構造を二重機械学習法によって再推定する。 理論的に、第二段階で得られる構造変化点の推定量が非常に速い収束速度において一致性を持つことを証明した。これは、高次元データにおける構造変化点推定の文献で得られたものよりも速い収束速度であり、パネルデータの特性を利用することにより可能となったものである。また、3段階目の二重機械学習法によ連関構造の推定量の漸近的性質を調べた。 実証例を用いて提案手法が実際のデータでどのように機能するかを調べる。国レベルのパネルデータを使用し、各国の研究開発がどのような波及効果を持つのか、その連関構造に構造変化があるのかを調べた。 論文執筆を進め、学会やセミナーで発表した。研究発表は今後も続ける予定である。また、近日中に論文を国際的国際的な学術雑誌に投稿する予定である。 また、関連して、高次元パネルータモデルへの機械学習法の応用や統計的推測についての研究も進めることができた。
|