研究実績の概要 |
本年度は, 経済主体の相互依存的な意思決定が要求されうる「制約つきマッチング」に関する理論研究をメインに行った. マッチング市場では, しばしば外性的な制約が課される. 例えば日本の研修医配属問題では, 過疎地域における医師数確保のために都道府県ごとに受け入れ可能な研修医の人数が制限されている. 仮に同都道府県内のある病院が多くの研修医を受け入れた場合, その他の病院が受け入れ可能な研修医の人数に制約がかかるかもしれない. "Feasibility-constrained matching markets" と題する本年度の理論研究は, 外性的な制約を特定化することなく, 一般的な制約のもとで望ましいマッチングを定義し, そのようなマッチングを見つけるアルゴリズムを考案した. また, 基礎的なマッチング理論の研究として, 上記研究の他に2つの研究を進めた. "Nash implementation in matching with contracts"と題する研究では, 契約つきマッチングモデルにおいてどのような均衡概念であれば望ましいマッチングを得られるか考察した. 研究内容は京都大学のセミナーで報告され, 現在は国際学術雑誌に投稿するための準備段階にある. また"Compatibility of efficiency and stability in priority-augmented object allocation problems in weak priorities"と題する研究では, マッチングの2つの望ましさが両立するための条件を導出している. この論文はProceedings of 2022 IEEE International Conference on Big Dataに査読付きで掲載されている.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の流行にともない, 学会がオンラインになったため. また, 出国・入国規制により, 海外の学会に参加できなかったため. 翌年度は多くの学会が対面開催を予定しているので, 主に旅費として用いる.
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