本研究の目的は、消費者の多属性意思決定プロセスにおける選択肢のソーティングとハイライトの効果を検討することにあった。 2023年度は、多属性意思決定に関する2つの実験を行った。1つ目の実験では、先行研究で用いた数値表現を用いた多属性表において、ハイライトを付与することによって意思決定がどのように変化するか検討を行った。その結果、ハイライトの使用によって意思決定時間が短くなる傾向がみられ、ハイライトにより意思決定支援に繋がる可能性を示した。また、優越構造の有無に関わらず試行の前半と後半で眼球運動パターンが変化する2段階型の意思決定方略が用いられていることを示した。2つ目の実験では、これまで2値に限定していた属性値を3水準に変更し、優越構造を持たない多属性表においてハイライトの効果について検証した。実験の結果、ハイライトの有無により意思決定にかかる時間に有意差はみられなかった。眼球運動データの分析から、ハイライトされたセルへの注視回数が有意に増加しており、必要以上にハイライトのセルへ視線が向けられ、かえって意思決定を阻害してしまった可能性があると考えられる。 研究機関全体を通じて、多属性表にハイライトを使用することが意思決定支援に繋がる可能性がある一方、その効果の限定性も示された。2022年度の研究では、個人の意思決定態度が意思決定プロセスに与える影響も示されており、今後は優越構造の有無や意思決定態度をの影響を考慮した上で、意思決定支援の方法について検討を行う必要がある。
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