最終年度は、社区営造(まちづくり)に関する小論を執筆したほか、国際学会(中華民国社区営造学会)で発表を行った。そこでは台湾の研究者と異なる、日本の社会学を踏まえた学際的視点から問題を提起し、現地の研究者と対話を行った。また、台湾のワークショップ(大地田野ワークショップ)や大学(国立政治大学、国立陽明交通大学)で成果を発表した。そこでは台湾の学生や社区営造の若手従事者、教員に日本の研究動向を説明しながら台湾の社区営造研究との接点を提起したうえで本研究の成果を披露し、地域研究的観点の発展について深い交流の機会を得た。社区営造の長期化にともなう新旧世代交代の研究と当事者のライフコースの変遷の研究は、台湾では家族社会学と農村社会学の二つに分断されており、これらをつなげることで台湾では発展しにくい学際分野の発展に寄与できたと思われる。 研究期間全体を通して他にも査読付き論文と事典コラムを1つずつ執筆した。査読付き論文は台湾を研究対象としない読者が多い論文だが、査読の課程で本研究の視点の有効性や経路依存性について指摘を受け、よりよい研究成果の公表につながった。同時に、この研究枠組みが日本、台湾だけでなく他の地域にも応用可能であることが確認できた。 本研究において、台湾の研究者だけでなく、日本の台湾以外を研究対象とする研究者と幅広く対話ができたことで、本研究の成果がより幅広い読者を獲得できるものとなった。
|