研究課題/領域番号 |
22K20181
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
申 惠媛 宇都宮大学, 国際学部, 助教 (60962769)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | エスニック空間 / 移民 / 多文化共生 / エスニック・ビジネス / 観光地化 |
研究実績の概要 |
本研究は、エスニック・ビジネスの集積と観光資源化に着目し、多様なエスニック集団が共在するマルチエスニックな空間における葛藤の生起・安定化(ローカルな秩序形成)のメカニズムを解明しようとするものである。そのための方法として、 (A)新大久保エリアを対象とする秩序形成条件の追跡調査(主に感染症拡大以降の状況に関する調査)および(B)国内外の他事例との比較調査による秩序形成メカニズムの明確化を進める。 本年度は、研究全体の前提となるローカルな秩序形成という分析枠組みに関する研究発表を進めるとともに、(A)新大久保エリアを対象とする追跡調査を実施した。前者については、これまで取り組んできた研究を発展させ、その成果を学術発表の形でまとめた。具体的には、居住者を主要な構成員としてきた従来の「(多文化)共生」枠組みの特徴と制限性を踏まえながら、アクターの国籍・エスニシティや地域の利用形態を限定することなく、中長期的な視野で特定地域において浮上する多層的な「地域課題」に着目する方法を提示した。これを通じて、マルチエスニックな居住空間でありながら、同時にエスニック財を主要資源とする観光地ともなってきた地域における複合的な秩序形成過程をより明示的に捉えようとした。 後者については、調査対象地域に居住、経営や就労、支援等の形で関わる者を対象に、感染症拡大後の生活・経営形態や営業状況、経営者間の関係性の変化を中心とするインタビュー調査を実施した。2020年以降の感染症拡大は、国境を越える/日常的な移動性および密集性の低減をもたらし、当該地域におけるマルチエスニックな居住空間およびエスニックな観光地としての両側面に影響を与えたことが予想されるため、これによる変化の有無やそのありようを探った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、これまで主要な研究対象としてきた(A)新大久保エリアを対象とする追跡調査と、新たに(B)国内外の他事例との比較調査を二本柱として進めることを予定している。当初は2022年度に(A)の調査・研究を中心的に進めるとともに(B)の調査に着手し、2023年度に(B)の調査・研究に中心的に取り組む予定であったが、本年度は両調査の前提となる分析枠組みの発展的考察を並行して進めたことにより、(B)の調査については次年度より取り組む形となった。調査計画には若干の変動があるものの、分析枠組みの発展的考察を進めたことにより研究の全体像をより明確化することができた。また、(A)の調査については当初の予定を実施完了し、分析・考察の段階に移っている。以上から、全体としてはおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、第一に、本年度に実施した(A) 新大久保エリア事例の追跡調査の結果を分析し、その成果を研究発表・学術論文等の形で発表する予定である。第二に、(B)国内外の他事例との比較調査を遂行するために先行研究の検討および実地調査を実施し、(A)から得られた知見と組み合わせて分析することで、マルチエスニックな空間におけるローカルな秩序形成のバリエーションとそのメカニズムの研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査計画の変動(理論研究との並行、近距離地域調査の長期化)により、本年度は遠方への出張など実地調査にかかわる諸経費が減少した。加えて、国際学術大会にオンライン出席する形になったことも旅費の減少につながった。次年度は遠方を含む実地調査および学会参加を予定している。
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