研究課題/領域番号 |
22K20188
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
本間 まり子 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 講師(任期付) (50962106)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | ジェンダー / バングラデシュ / 女性のエンパワメント / ポストコロナ / マイクロファイナンス |
研究実績の概要 |
バングラデシュでは、女性対象のマイクロファイナンス(以下MF)事業を通じた融資金の多くが男性の手にわたるという状態が、MF事業が広まった1980年代から継続しており、規範下において所与のものであると捉えられていた。しかし報告者が2015年に実施した調査では、女性たちは、融資金の活用や収入へのアクセスを諦めているわけではなく、実は、規範の逸脱によって世帯内で生じる摩擦を避けために、独自の戦略を用いて限定的な形でもおこなおうとしていた。 本研究では、新型コロナウィルス感染拡大や拡大防止措置(以下、コロナ禍)によりジェンダー構造の変化に向けた危機傾向が生じているという仮説をたて、コロナ禍によって生じた、「女性の融資金の活用方法や収入へのアクセス」、「ジェンダー規範に対する解釈」に関する変化を明らかにすることを目指している。事例調査は、(A)コロナ前後の変化、 (B)ポストコロナ禍における意識の変化のプロセス、(C)コロナ禍後についての調査、という段階的なアプローチを用いる。 初年度にあたる2022年度は、2015年に報告者が実施した調査対象者を対象として、インタビューやワークショップを通じて、コロナ禍前後の状況についての聞き取りをおこなった。調査では、コロナ禍におけるロックダウン及び、2022年2月以降のロシアによるウクライナ侵攻による急激なインフレーションが、多くの世帯に経済的な必要性を引き起こし、女性の収入へのアクセスが促進されるようになってきていることが明らかになった。背景に、教育普及による女性の能力強化、母子保健に関する啓発活動や教育熱の高まりによる少子化や核家族化、政府が促進してきているICTの促進による情報や遠隔コミュニケーションの普及などの影響がみられた。 次年度、現地調査を通じて、変化のプロセスを明らかにし、仮設の証明を目指す予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、2年間で実施する計画である。 バングラデシュ北西部パブナ県において実施中のMF事業を事例として、事業の利用女性による「①融資金の利用」「②収入へのアクセス」「③ジェンダー規範に関する解釈」の3項目ついての調査を計画している。 調査は、 (A)コロナ前後の変化、 (B)ポストコロナ禍における意識の変化のプロセス、(C)コロナ禍後についての調査、という3つの段階的なアプローチを用いることにより、時間的な変化を明らかにする計画になっている。報告者が2015年に実施した現地調査を展開する位置づけにあり、同じ地域の同じ対象者を主な対象とする。さらに2回の現地調査を通じて、3段階の情報を目指している。 1年目の2022年度は、2023年2月から3月にかけて第1回目の現地調査を実施し、コロナ前後の状況及び、ポストコロナ禍に向けた意識の確認をした。またワークショップを通じて、働きかけを行った。 調査の実施状況や進捗は、概ね計画通りであり、2015年に実施した調査結果と比較することにより、(A)及び(B)段階の研究が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2年目となる2023年度は、8月から9月にかけて、第2回目の現地調査を計画している。 第1回目調査から第2回目調査の期間は、現地協力NGOの協力による遠隔でのアクションリサーチ期間となっている。 その結果に基づき、(B)から(C)段階の調査を終え、研究全体の成果を取りまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2回計画している現地調査のうち、最終年度にあたる2023年度の調査において計画内容の一部を網羅するため。
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