政治哲学において非理想理論と呼ばれる理論は、不平等や抑圧といった現実に存在する不正義をどのように解消すべきなのかを検討する。この研究では非理想理論の構築に社会学ができる貢献とはどのようなものなのかを検討した。検討の結果、社会を内側から観察する学問としての社会学には、不正義を解消するためのさまざまな政策的介入の効果を評価することよりも、不正義が再生産される過程を、そこに含まれるさまざまな意図せざる結果も含めて分析、評価することが求められるということ、また、非理想理論が提示する不正義が日常的な相互行為のなかでどのように達成されているのかを分析することが求められるという結論が導き出された。
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