2023年度は、前年度の調査結果を踏まえ、相談支援と非正規公務員の関係 : 経過・現状・問題について相談支援を担う非正規公務員の状況について、福祉社会学会誌に論稿を発表したほか、高知市福祉事務所の協力の下で実施した調査に基づき、社会政策学会でケースワーカーとして活動する非正規公務員の状況と課題ならびに人事上の見直しの方向性について発表し、同報告は社会政策学会誌にて論稿として掲載した。 また、2023年度は、前年度に続き、ソウル市の「出かける福祉」(=チャットン)の経過と課題ならびに問題点に係る調査ならびにその母体となる新たな共同体づくり(=マウル運動)のインタビュー調査のため同地を訪れ(2024年2月)、①「マウルと人」運動関係者、②チャットンの推進戦略関係者、③ソウル市マウル共同体総合支援センター長、④ソウル市福祉財団、⑤ソウル研究院等でのヒアリングを実施した。韓国ソウル市の調査の成果は、一部は学会報告等で紹介しているものの、本格的なまとめは2024年度において実施する。 2年間にわたる調査(日本国内では主に高知市、韓国ではソウル市)を通じて、以下のような知見を得た。 第1に、日本と韓国の公務員制度は、正規公務員に関してはかなり似通っているものの、非正規公務員(韓国では非正規労働者)に関しては、真逆の関係にある。日本では公務員制度(法)のなかに非正規を位置づけたが、韓国では公務員と労働法が適用となる公務労働者という2層構造であること。日本の非正規公務員制度は、世界的にみて特殊であること。第2に、日本の地方自治体の新たな非正規公務員制度である会計年度任用職員制度は、非正規公務員をその地位に固定するものであって早急な見直しが必要であること。第3に、地方自治体の中には、急速な公務員の成り手不足の進展のなかで、非正規公務員の正規化に取り組む実例が生じているということであった。
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