研究課題/領域番号 |
22K20205
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研究機関 | 大阪成蹊大学 |
研究代表者 |
今井 涼 大阪成蹊大学, 教育学部, 講師 (60964517)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | 母子福祉 / 母子家庭 / 山高しげり / 全国未亡人団体協議会 |
研究実績の概要 |
現代日本において、ひとり親家庭は経済的に不利な状態であり、母子家庭の場合は収入の低さがさらに顕著である。本研究の目的は、その一因が女性運動家の山高しげり(以下「山高」)や当事者団体である全国未亡人団体協議会(後に改称、現全国母子寡婦福祉団体協議会。以下「全未協」)がリードした母子福祉の活動にあるのではないかという仮説をたて、それを検証することにある。 山高は戦中、戦後の混乱によって父親を失った母子家庭の窮状を救うため、全未協による活動をリードして、母子福祉の推進に尽力した女性運動家である。運動の成果の一つとして1964年に成立した「母子福祉法」(今日の「母子及び父子並びに寡婦福祉法」)は、長い間日本の母子福祉の施策の要であり続けた。現在のひとり親家庭の制度の輪郭をはじめに描き出したのが山高や全未協の活動だといえるだろう。 しかし同時に、山高や全未協の活動が見逃した課題や捨象した問題があるのではないか。その限界ゆえに現在のひとり親家庭支援が十分に効果をもたらせない現状につながっているのではないか。本研究はこのような問題意識に立って、山高や全未協の対象からもれたケース、射程から外れた問題、見逃された課題などを明らかにすることを目指す。そこから、必要とされていた支援やサポートは何だったのか、①社会福祉の視点、②ジェンダーの視点、③子どもの権利擁護の視点から検討し、山高や全未協の活動の限界に関する評価につなげるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は主に山高しげりや全国未亡人団体協議会の資料収集に努めた。具体的には、応募者の所属大学を通じて資料を取り寄せたり、国立女性教育会館、国立国会図書館東京本館、日本社会事業大学附属図書館等を訪問して資料の閲覧、複写を行った。しかし資料を充分に分析するに至らず、当初の計画よりやや遅れている。未発見の資料の所蔵元についても未だ明らかにできておらず、資料収集がやや遅れている状況である。 また、関係者への聴き取り等については、当初予定していた聴き取りの相手方の状況が研究の目的にそぐわないことがわかった。当時の関係者はかなり高齢化しており、適切な聴き取り相手が未だ見つかっていない。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、聴き取りが可能な関係者を探す。また、聴き取り相手が見つからなかった場合も考慮して、2023年度は未発見の資料の収集にさらに力を入れ、分析の深化につなげていきたい。 研究成果の発表方策としては、2022年度に収集した資料の分析検討をすすめ、学会報告や学術誌への論文の投稿を行う予定である。具体的には2023年10月14日~15日に開催予定の日本社会福祉学会での発表報告や、日本社会福祉学会が発行する学会誌「社会福祉学」に研究成果を論文として投稿することを目指している(2023年7月末・2024年1月末)。
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次年度使用額が生じた理由 |
未発見の資料の所蔵元について未だ明らかにできておらず、資料収集がやや遅れているため、当初計画していた額よりも実際の旅費の支出額が下回った。また、関係者への聴き取り等については、当初予定していた聴き取りの相手方の状況が研究の目的にそぐわないことがわかった。他に適切な聴き取り相手が未だ見つかっていないため、謝金の費目の支出を行っていない。 2023年度はさらに積極的に未発見の資料の探索を行い、聴き取り相手についても現在も活動を続けている組織のつながりを頼って探していく予定である。
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