本研究では,代理指標を用いた統計的因果推論のバイアスを定量化を目指した。高等教育研究を含む社会科学研究では,多くの変数が構成概念であり,構成概念にできるだけ近い代理指標を作成することが,精緻な因果推論をなす要として考えられてきた。一方で,近年になって構成概念と代理指標の近さがそのまま推定結果の精度の高さに繋がらないことが指摘されている。そこで,本研究では,構成概念を完全に測定できないという制約を受け入れ,どのような代理指標を用いることが精緻な統計的因果推論に繋がるのかを,測定誤差の生じ方に着目して明らかにするべく研究を進めてきた。具体的には,従属変数のプロキシを用いた場合のバイアスの定量化に取り組み,その延長として,欠損が生じた場合のトレードオフ,中間変数をプロキシとしてあえて統制する場合の検討を行った。いずれの場合も,正確なプロキシが最もバイアスを小さくするとは言えず,他の変数との関係から最もバイアスが小さくなるような変数作成,変数測定を行い,感度分析を実施する必要性が示された。
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