本研究では、米国の高大接続プログラムである二重登録制度(Dual Enrollment: 以下DE)およびDEを主軸とした高大連携型の教育課程を特徴とする早期カレッジ・ハイスクール(Early College High School: 以下ECHS)を対象として、近年の動向を把握すると共に、これらの教育効果としてカレッジ・レディネス(College Readiness)の形成という視点から考察した。 近年の動向として、Every Student Succeed Act(ESSA)の制定によって、教育行政へのDEの条件整備が求められ、ハイスクール教育において広く実施されるべき活動としてより強い制度的位置づけを得た。具体的には、州・地方教育行政の教育計画およびアカウンタビリティの中にDEを明記することが求められたことや、特別なニーズを持つ生徒や貧困家庭出身者が多い学校向けのプログラム、英語学習者への支援、あらゆる生徒を対象とした拡充教育(enrichment)としての補助金の使途も明記されたことなどが挙げられる。 DEおよびECHSにおけるカレッジ・レディネスの形成について、2021)。DEに参加した生徒は、実際の大学環境における「真正な経験」を契機として、大学生という近い将来の「役割」へと自己を統合させる「予期的社会化」を生じさせ、その結果カレッジ・レディネスを形成する、という一連のメカニズムを仮説的に提示した。
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