研究実績の概要 |
スウェーデンのものづくり教科であるスロイド科には, 布や革などの柔らかい素材を用いたテキスタイルスロイドの学習が含まれており, これは日本の家庭科の被服製作学習に類似するものである。本研究では, 児童・生徒のアイデアを活かしたテキスタイルスロイドの学習より知見を得て, 日本の家庭科における個別最適な被服製作学習の支援方策を検討することを目指している。令和5年度は, 令和4年度に訪問した小中一貫校および特別支援学校小学部のうち, 3校を再訪問し, 4名の教師によるテキスタイルスロイドの授業を観察してフィールド・ノーツを作成した。また, その4名の教師を対象に半構造化インタビュー調査を実施し, カリキュラム構想を踏まえた教師による製作題材決定の意図などについて尋ねた。その結果, テキスタイルスロイドのカリキュラムは小学部や中学部の単位でデザインされており, 教師はナショナルカリキュムの指針を考慮した上で, 各学年で製作させたい題材を決定していたことが分かった。そして, 教師は指定した製作題材を児童・生徒に提示するが, 作業において児童・生徒に選択の余地を残しており, 対話を通して彼らのアイデアを生かしたオリジナル作品作りのために個別的な支援を心掛けていることが明らかになった。また, カリキュラムを技術的観点からみると, 第3学年で手縫いをし, 第4学年からミシン縫いをするなどの系統性をもたせており, 自由製作活動の実現に向けた意図があることと考えられる。日本の家庭科においても, 作品の自由度をより高める指導がおこなわれるよう, 例えば布にデザイン加工を施す授業など, 事例を紹介することが必要だと考えられる。そのための試みとして, 被服製作学習におけるスロイド科教師の児童・生徒への支援方策をまとめた論文を小学校教員に配布した。
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