研究課題/領域番号 |
22K20233
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研究機関 | 大阪人間科学大学 |
研究代表者 |
清水 凌平 大阪人間科学大学, 人間科学部, 助教 (00964446)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | 令和の日本型学校教育 / 探究学習 / マルチプル・インテリジェンス理論 / 理科教育 / 個別最適な学び / 協働的な学び |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,「マルチプル・インテリジェンス(MI)理論および自由度の高い協働的な探究プロセスの活用による「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体化実現のための理論・実践基盤の形成」である。それを踏まえ,目的達成のための目標を以下の3つと定めた。 Ⅰ)学習活動において活動者の各インテリジェンスがどのように表出するのか,またその特徴を明確化する。 Ⅱ)MI理論に基づいてグルーピングされたグループ・班において,活動者それぞれが持つインテリジェンス同士がどのような相互作用を及ぼしているのかを検証する。 Ⅲ)幅広い校種に対応した自由度の高い協働的な探究プロセスを開発し,教育実践とその分析を重ねることで実践基盤の形成を行う。 本研究の1年目は理論・開発研究段階として,海外の先行事例調査やMI理論に基づくグループや探究学習における会話や行動の記録,質問紙の分析を学習者が持つ個性や強みの理論的基盤形成をはかると同時に,MI理論を活用した協働学習,特に小中学校を対象とした探究プロセスの開発に向けて検討を行った。MI理論に基づくグループに対して行った質問紙調査の結果から,MI理論に基づくグループでは,ある突出した能力を持つ者が他者を率いていく「垂直の関係性」ではなく,多様な能力を持つ者が集まり,1つの尺度で優劣をつけがたい「水平の関係性」が生じているという示唆を得た。また,探究プロセス開発に向けて,既存の自由度の高い協働的な探究プロセスについて整理・分析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海外の先進事例調査として,オランダの学校教育について現地に赴き,調査を行った。個々の子どもの発達・成長,また子ども自身の意思決定を尊重した学びがデザインされていると同時に,多様な他者の存在を感じ,それと調和していく協働的な学びを随所に見て取ることができた。令和の日本型学校教育で示される「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体化に向けてオランダの教育から学び得ることが多分にあると考える。 国内の複数の学校現場において,自由度の高い協働的な探究学習の実践およびMI理論に基づくグルーピングを実施し,事後に質問紙調査を実施した。量的な側面からの分析より,自由度の高い協働的な探究学習およびMI理論に基づくグルーピングが,学習者の高い満足度を得られていることが改めて確認された。加えて,自由記述の質的な側面からの分析より,自由度の高い協働的な探究学習が,学習者にとって知識や単一の能力だけでは解決不可能な題材を扱っていること,そしてMI理論に基づくグループが自分にない能力をもつ他者がいる集団であり,幅広い考え方や意見が表出する場であることが明らかとなった。これらから,MI理論に基づくグループで探究学習を行うときの実態として,活動中グループ内ではある突出した能力を持つ者が他者を率いていく「垂直の関係性」ではなく,多様な能力を持つ者が集まり,1つの尺度で優劣をつけがたい「水平の関係性」が生じているという示唆を得た。
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今後の研究の推進方策 |
MI理論に基づくグループや探究学習におけるデータを引き続き収集する。特に活動中の会話データを中心に,学習者の個性や強み,能力について動的な実態を捉えたい。 それらのデータの分析より得られた知見を基に,主に小中学生を対象としたMI理論を活用した協働的な探究プロセス開発を継続して行う。また,開発した探究プロセスを基に学習者の個性や強みを生かせる探究学習の実践を試みる。実践の様子や結果を映像・音声や質問紙,インタビュー等によってデータを収集し,質的・量的手法を用いてフィードバックを繰り返しながら,学習者の個性や強み,能力がどのように表出するのか,また協働的な学習活動の中でどのように作用し合うのかを明らかにすると同時に,これらの探究学習の実践基盤を構築する。 さらに,学習者の個性や強みを生かせる探究学習の有効性について,実践を基に検証し,口頭,紙面発表や教員研修の設定などにより普及を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症拡大防止のため,アメリカへの渡航を延期したため,旅費および人件費・謝金に変更が生じた。感染状況を鑑みて,今年度中の渡航を目指す。 また,探究プロセス開発において物品の購入が予想されていたが,現状で新規に物品を購入することがなかったため,物品費に次年度使用額が生じた。今後の探究プロセス開発および授業・教材開発において使用が見込まれる。
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