第一に困難な歴史の学習者の感情を実証的に研究する際の研究方法論を明らかにしたことである。特に、精神分析アプローチに基づく研究と社会文化的な視点に立つ研究の研究方法論を具体的に明らかにした。第二の意義は、社会文化的な視点にたち、日本の学校において朝鮮の植民地化の歴史を学んだ高校生の感情的な反応の実態を明らかにした。生徒の中には日本の過去の暴力行為に対して感情的に反応し、被害者をケアしようとする生徒がいる一方で、「日本は被害国である」と「韓国は不当な要求をしてくる国である」という表裏一体の犠牲者意識ナショナリズムを帯びた社会文化的に醸成されたナラティブが生徒のケアを阻害していた。
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