本研究は、社会的な論争問題を議論する学習法(以下「論争問題学習」)において、生徒の議論を促すために教師が取りうる実践可能で効果的な指導法を解明することを目的とした。研究計画当初は、「論争問題学習における議論を促す指導法ガイドブック」を作成し、教育現場での実施を意図していたが、ガイドブック作成・実施するまでに明らかにすべき課題が多いと考え、最終年度は「生徒の議論を促すために教師が取りうる実践可能で効果的な指導法」の内実を明らかにする研究へとシフトした。 研究初年度は、米国の論争問題学習研究の成果を分析し、その主要な学習アプローチとなっている「ソクラテス・セミナー」に注目し、その授業構成原理を明らかにした。その後、公立中学校教員の協力を得て、「ソクラテス・セミナー」を中学校社会科公民的分野で複数回実践し、その意義や実践上の課題についてフィードバックを得た。また、議論学習における教育評価にも着目し、米国の研究成果を参考に「議論スキルを高めるための自己評価シート」を作成し、中学校現場での使用を試みた。ここでは、議論の内容や手続きを生徒自身が自己評価することに一定程度の効果が認められるものの、評価すること自体の意味を共有する必要性が見出された。 研究最終年度は、初年度の成果をまとめ、学会等で報告するとともに、論文化に努めた。また、論争問題学習における教師の役割に関して中学校社会科教師に対する調査研究を行い、社会問題を授業で扱う際の教師の立ち位置について検討した。
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