研究課題/領域番号 |
22K20257
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研究機関 | 東京未来大学 |
研究代表者 |
中澤 純一 東京未来大学, モチベーション行動科学部, 講師 (10963217)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | 多文化教育 / 多文化共生 / 地域社会 / 多様性の尊重 / 社会正義の実現 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、多文化教育の教材開発を行い、開発教材を実践にかけ、その教材開発の有効性を検証し、その検証を踏まえ、開発した教材を再構築することである。本年度は、①多文化教育の教材開発及び授業実践に関する資料収集及び②フィールド調査を中心に行った。 ①において、今までに蓄積された日本の学校教育における多文化教育の教材開発及び授業実践を中心に文献収集を行った。日本における多文化教育の研究は、これまで主に理論的研究を中心とし、比較教育学や異文化間教育学の分野を中心に制度的、政策的研究が進められてきた。一方、実践的研究として、カリキュラム開発・論がある。これらは、カリキュラム構成の原理やカリキュラム・デザインを提言・提案する研究である。海外のカリキュラム構成の原理やカリキュラム・デザインに関する提言を、日本の学校教育おける多文化教育の教材開発及び授業実践の中で、カリキュラムに具体的に応用・発展していくことの必要性が再確認された。 ②において、浜松市近隣の袋井市(静岡県)での多文化共生状況の調査、ハワイ移民資料館(広島市)における多文化教育教材作成のための資料・史料調査、津島市立東小学校(愛知県)での総合学習「津島市SDGs未来都市プロジェクト」からの地域課題に根差した多文化教育授業実践のための情報収集調査を行った。これらのフィールド調査から、地域の多文化共生の在り方を地域の結びつきや変容に着目しながら、多文化教育における教材開発の作成、過去に海を渡り世界の国々で移民として暮らしてきた日本人移民や日系人から地域に根差した多文化教育の教材開発の試みの重要性、児童生徒が地域の未来に関心をもち、積極的に地域社会に参画し、多様性の尊重及び社会正義の視点から考察することのできる教材開発が求められることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、第一に、地域の多文化共生の在り方を地域の結びつきや変容、持続可能性に眼目した教材開発構想はどうあるべきか、第二に、学習者が多様性を尊重し、マジョリティの社会的な特権性を認識させるにはどのような教材を開発することが有用であるか、第三に、マジョリティとマイノリティの間に、無意識の権力関係が存在していることに気付き、その打開策を提案することができる教材をどのように開発すればよいかの3点を明らかにすることである。そのため、当該年度では、①多文化教育の教材開発及び授業実践に関する資料収集【2022年度(1年目)】、②フィールド調査【2022年度(1年目)】、③教材開発【2022・2023年度(1・2年目)】の手順で研究を進めてきた。 ①については、日本における多文化教育の理論的研究及び実践的研究に関する資料・文献収集を行い、教材開発にむけた理論構築を試みた。なお、多文化教育・社会正義のための教育の先行研究者から理論的な研究協力として示唆を得ることを予定していたが、2022年度における理論構築を基に、2023年度に実施した方がより効果的であると判断し、次年度へ延期することにした。 ②については、浜松市及び外国人集住都市(静岡県袋井市)、ハワイ移民資料館(広島市)、津島市立東小学校(愛知県)等においてフィールド調査を行い、今現在の多文化共生の状況を把握することに努めた。これらの成果を、次年度に行う教材開発の手がかりとする。 ③について、2022年度から、小中学校における総合的な学習の時間や教科学習において活用可能な多文化教育教材を開発する予定であったが、一部の単元構想の作成で留まった。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、2022年度に取り組んだ日本の学校教育における多文化教育の教材開発及び授業実践に関する教材開発にむけた理論構築の研究成果及びフィールド調査で得た地域の多文化共生の在り方を地域の結びつきや変容、マジョリティの社会的な特権性を認識させるための視座、マジョリティとマイノリティの間に、無意識の権力関係が存在していることに気付き、その打開策を提案することの認識を基に、①教材開発及び②教材実践を行う。 ①について、小中学校における総合的な学習の時間や教科学習において活用可能な多文化教育教材を開発する。なお、参加型学習を用いたアナログ教材及び動画やアニメーション等のデジタル教材を開発し、汎用可能な教材集を作成する。 ②について、開発した教材を、「国際理解教育ファシリテーター養成講座」や教員研修、講師依頼による小中学校をはじめとした学校教育における講座等の中で実践し、教材の有効性について検証し、教材の再構築に繋げる。 研究成果については、日本国際理解教育学会等において研究発表を行い、大学等の研究紀要に投稿し、報告書をまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由と使用計画について、以下の3点である。 第一に、多文化教育の教材開発及び授業実践に関する資料収集において、多文化教育・社会正義のための教育の先行研究者に理論的な研究協力として示唆を得る予定であったが次年度に延期したためである。 第二に、参加型学習を用いたアナログ教材及び動画やアニメーション等のデジタル教材を開発の一部を当該年度に予定していたが、日本の学校教育における多文化教育の教材開発及び授業実践に関する教材開発にむけた理論構築を基にして、次年度に全ての教材の素案を基に、専門家にアナログ教材のデザイン化やアニメーション作成を依頼した方が良いと判断したためである。 第三に、引き続きフィールド調査を重ねると共に、本年度訪問した地を再訪問し、追加的フィールド調査を行うことで研究成果の向上が期待できるためである。
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