研究課題/領域番号 |
22K20264
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研究機関 | 兵庫教育大学 |
研究代表者 |
真田 穣人 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 講師 (70966100)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | 協同学習 / 協同学習認識 / 友人サポート / 学習適応 / 教育方法 / 教師教育 |
研究実績の概要 |
令和5年度の研究実績として,前年度の調査をもとに,小学生を対象に肯定的協同学習認識に加えて否定的協同学習認識や協同学習において学びを深めるために必要なこと等について自由記述による質問紙調査を実施し,分析したことが挙げられる。自由記述とともに,友人サポートや教師サポート,向社会的スキルや学習適応を含む学校適応感についても同時に測定し,それらの関連について検討した。調査分析の結果,友人サポートの程度によって児童の肯定的な協同学習認識が異なること,同様に学習適応の程度によっても児童の肯定的な協同学習認識が異なることが示された。児童の友人サポートについてアセスメントを行い,それらに応じて授業を計画したり,フィードバックをしたりすることで,児童の肯定的な協同作業認識を効果的に高める可能性が示された。 また,小学校初任教員を対象にインタビュー調査を実施し,初任教員の協同学習に対する認識について検討した。調査協力者の共通点から,初任教員であっても,半年間の経験から,授業実践に必要な力,協同的な学びを展開する際に必要なことがらや課題を経験的に理解していることが示された。ただ,それらの課題をどのように達成するか,どのように実践していくのかについては,理解できていなかった。実現が難しいとされる協同学習実践に必要なことがらの習得に対するレディネスは,半年間の教職経験であっても整う可能性が示唆された。一方,調査協力者の相違点から,それぞれが担任する学級や学校の状態,同僚の教員や学校文化によって,協同学習への認識が変容する可能性が示された。児童が肯定的な協同作業認識を高める授業を実践できるようになるためには,教員一人一人の経験に合わせて研修プログラムを選択したり,様々な経験のある教員同士で情報共有や事例共有を行ったりするなかで,授業実践に関する知識や技能を構築していくことが必要である可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では,小学生を対象とした協同作業認識尺度を開発し,その尺度を用いて調査分析を行うことで,児童が肯定的な協同作業認識を高める授業を実践するために教師に必要な指導の視点と方法を明らかにすることを目的としていた。 児童の協同学習認識については,質的に検討を進めることができている。また,教師を対象に調査分析をすることで,肯定的な協同作業認識を高める授業を実践するために教師に必要な指導の視点と方法についての知見を集めつつある。 その一方で,依然コロナ禍の影響があり,本研究で求められる,協同スキルを頻繁に活用する対面的なやりとりの機会が多く設けられた学びの実施が調査協力校において難しかったため,尺度開発を中心とする量的な検討については,一年延期することとした。そのため,現在までの進捗状況は,やや遅れていると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は以下の研究活動を予定している。 1.これまでの調査をもとに,尺度開発のための本調査を実施,分析する。また,協同作業の認識と学年差,性差についても検討し,論文にまとめて投稿する。 2.開発した協同学習認識尺度を用いて事前事後調査を行い,協同学習認識を高めた学級の担任と児童を抽出し,該当の教員と児童に対して,インタビュー調査を行い,協同作業認識を高める指導方法を明らかにする。 3.2で明らかになった協同作業認識を高める指導方法を基に,協同作業認識を高める授業方法を開発し,研究の知見の公開と提言を行うことで,幅広い教育現場への普及を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査協力校における協同学習実施状況を考慮して,量的調査研究の一部を次年度に延期したため,その調査に関わる旅費,分析に関わる物品費,人件費・謝金およびその他の費用を使用しなかったことが次年度使用額が生じた理由である。 そのため,令和6年度に実施が決まっている量的調査のための旅費,調査分析のための物品購入,調査データの入力等のための人件費,調査分析にあたって,専門的知識の提供を受けるための謝金への使用を計画している。
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