本研究の目的は、形式と内容を止揚した「書くこと」の理論と実践を提案することであった。 主な成果として、 (1)作文授業における形式と内容の往還を把握し分析するための手法として、タイピング記録システムを活用した方法を提案し検討したこと(髙井太郎「ICTを活用した中学校作文授業における学習者の実態―タイピング記録システムを用いた書く過程の把握に基づいて―」全国大学国語教育学会・第143回千葉大会)、 (2)形式と内容の往還を促す要因としてモチベーションに着目しアンケート分析を行い、検討したこと(髙井太郎「作文単元における学習意欲の要因分析―トップダウン型とボトムアップ型の授業比較を通して―」全国大学国語教育学会・第144回島根大会)、 (3)形式と内容の往還を促すと考えられる作文授業実践を分析し、検討したこと(髙井太郎「ICTの活用による作文授業の改善―1人1台端末を用いたティームティーチングによる作文ワークショップ実践―」『国語科教育』95号)、以上3点があげられる。 さらに、研究計画には含まれてはいないが、研究期間中に生成AIが国語科教育において話題となり、作文指導での活用方法の検討を行った。その結果、生成AIを利用したプロセスアプローチによる作文授業の方法を提案することができた(髙井太郎・武田正幸「作文コメントにおけるAI活用の可能性」印刷中)。これにより形式と内容を止揚した「書くこと」の理論と実践を改善するための新たな視点も得られた。
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