本研究の目的は,勤勉性の下位概念を体系的に見出すこと,ならびに勤勉性の関与が示唆される社会的アウトカム変数との関連を検討することである。これを検証するため,(1) 勤勉性が反映された行動のリストの作成,(2) 作成された行動リストを用いて質問紙調査をおこない,因子分析によって勤勉性の下位概念の構造を検討,(3) 各下位概念と学業,健康,仕事についての変数との関連の検討をおこなう。 当該年度においては,まず(1) を検討するため,前年度に収集した1296項目の勤勉性が反映された行動項目から調査に使うリストを作成した。重複項目を削除した後,順向項目と逆転項目それぞれに対して潜在意味分析を実施した。表現方法やバランスを考慮し,162項目(うち逆転項目79項目) を行動リストとして決定した。 続いて,(2) と (3) を検討するため,オンラインによる質問紙調査を実施した。調査会社の登録モニターに対し募集をおこない,920名を対象に3回の調査をおこなった。調査1では行動リストから99項目,調査2では行動リストから63項目とBig Five尺度への回答を求めた。調査3では,学業,健康,仕事に関する項目,その他の心理尺度への回答を求めた。なお調査3においては920名のうち720名が回答した。 探索的因子分析の結果,勤勉性はresponsibility,routines,orderliness,punctuality,socialization,self-control,industriousnessの7つの因子から成ることが示された。また,外的基準の変数との相関係数から,健康はorderliness,仕事はindustriousnessとの間における正の関連が顕著であることが示された。学業は下位概念ごとに大きな違いはなかったがpunctualityとの間における正の関連が特に見られた。
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