研究課題
本研究の目的は,人工知能に仕事を奪われた場合と人間に仕事を奪われた場合において,人々の原因帰属がどのように異なるのかを検討することであった。本研究では「人工知能に仕事を奪われたとき,奪われた原因を自身の能力の欠如や人工知能の能力の高さに帰属する」という仮説を立てた。一方人間に仕事を奪われた場合は,その原因を運の欠如に帰属するという予想を立てていた。1年目では,投資ゲームや最後通牒ゲームといった課題を用いて,仕事を奪われるというシチュエーションを実験的に作り出した。実験の結果,仕事を奪われた場合の原因帰属は,奪った相手が人工知能と人間であまり変わらなかった。相手によって原因帰属が異なるという仮説は先行研究のある知見に基づいたものだった。その知見とは「人工知能はミスなく完璧に課題を遂行するが,人間はミスを起こしうると人々は期待している」というものである。「完璧に遂行する」と期待されている人工知能に仕事を奪われた場合,「能力で負けているから仕事を奪われた」と思いやすく,「ミスを起こしうる」と思われている人間に奪われた場合は,「運が悪かった」と帰属しやすいだろうと予想していた。2年目の研究では「そもそも人工知能は完璧に追行すると思われているのか」という前提を確認するためのWeb調査を実施した。文章生成用の人工知能や自動運転車などを取り上げた。分析では「完璧に遂行する」という期待に関して,人工知能と人間に差があるのかどうかを検討した。その結果,調査によって期待の差は混同していた。例えば,文章生成用の人工知能を取り上げたときは,完璧さの期待は人工知能と人間であまり違いはなかった。しかし,自動運転車においては,人間よりも人工知能の方が「完璧に運転する」と期待されていた。知見が混在していたため,完璧さ期待は人工知能が扱われる領域によってその程度が変わる可能性が示唆された。
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International Journal of Human?Computer Interaction
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Transportation Research Part F: Traffic Psychology and Behaviour
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