研究課題/領域番号 |
22K20312
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
野間 紘久 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 認知行動療法センター, 科研費研究補助員 (60967636)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | ベースレジストリ / マルチモーダル / 心理療法 / 作用機序 |
研究実績の概要 |
精神障害に対しては薬物療法に加えてより侵襲性の低い心理療法を行なうことが,うつ病や不眠症など多くの治療ガイドラインで推奨されている(e.g., 米国睡眠学会,2017)。しかし,有効性が示されているうつ病に対する認知行動療法でもその効果量は中程度に留まっており(佐藤ら, 2012),心理療法の治療効果が十分に発揮されているとは言い難い状況にある。心理療法の効果を最大化するためには、その作用機序を明らかにする必要がある。 本研究では,セラピスト(Th)-クライエント(Cl)間で心理療法中にやりとりされる複数の非言語・言語的な相互プロセス, Clのアドヒアランス,Thの共感力等が,症状の改善に及ぼす影響について検討し,心理療法の作用機序を明らかにすることを目的とする。研究1では, Th-Cl間でやりとりされたマルチモーダルデータを含む心理療法で得られた複数の情報について時系列を基に一元化し,解析可能なベースレジストリの作成を行う。研究2では,位相差解析や機械学習を用いた解析により,ベースレジストリから抽出したマルチモーダルデータと心理療法による症状の改善との関連について明らかにする。 初年度である2022年度は、データの取得を行うとともに、得られたデータを格納するベースレジストリの作成を行うことを目的として、複数のマルチモーダルデータについて取得時点を参考に時間軸の統一を行った。また、各モダリティの単一データについて、次年度の解析で用いる特徴量の選定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症の感染拡大が続いており、臨床試験の完了が予定よりも遅れているものの、データの取得は完了しており、2023年度に向けた解析の準備についても計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度にて臨床試験が完了し、映像、音声、視線、皮膚電位のデータおよび臨床試験のアウトカムとしての質問紙データの取得が完了した。これらのデータに関して解析が可能になるよう、各データの取得時点を揃え、各モダリティの単一データについて、2023年度の解析で用いるデータの選定を行った。 2023年度には、視線、皮膚電位、音声に加えて、映像から表情と身体運動の特徴量の抽出を行い、単一モダリティのデータの同期指標を算出し、アウトカムとの関連を明らかにすること、そしてタイムスタンプによって突合したマルチモーダルデータについて、アウトカムとの関連を明らかにすることで、アウトカムへの効果の説明モデルを構築する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響によって、データの提供元となる臨床試験が実施完了に至っていないため、データ入力の人件費分を使用しなかった。また、解析ソフトやPC購入に関して、すでに所持しているもので対応可能となったために次年度使用額が生じた。2023年度は臨床試験が完了しているため、データ入力の人件費のために使用予定である。
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