研究課題/領域番号 |
22K20332
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 和広 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任研究員 (90962267)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | ディスプレイ / プリズム / 局所志村多様体 / p可除群 |
研究実績の概要 |
2023年度は局所志村多様体の整モデルの局所的な幾何構造の決定を行った.このために,G-ディスプレイと呼ばれる概念をBhatt-Scholzeが導入したプリズム(prism)上で研究した.ここでGはp進整数環上の簡約群である.Gが一般線形群の場合,G-ディスプレイは整p進ホッジ理論におけるBreuil-Kisin加群と同じ概念となる. 一番の研究成果はプリズム上のG-ディスプレイについての変形理論である.特に,標数pの完全体上のG-ディスプレイに対して普遍変形環を構成し,その性質を研究した.この帰結として hyperspecial なレベル構造を持つ局所志村多様体の整モデルの局所的な幾何構造を決定することに成功した.この結果はPappas-Rapoport及びBartlingによる先行研究の一般化である.また,プリズムを一般化した概念を用いることで,これらの結果は任意のp進体の整数環上の簡約群に対して証明を与えることができた. さらに,p可除群の普遍変形環とG-ディスプレイの普遍変形環の比較をすることで,p可除群のBreuil-Kisin加群を用いた分類定理の別証明を与えた.同様の手法でScholze-Weinsteinによるp可除群のBreuil-Kisin-Fargues加群を用いた分類定理の別証明も与えた. これらの結果は現在論文としてまとめている.変形理論に必要となるプリズム上のG-ディスプレイに関する基本的な結果,及び降下理論についての執筆は完了し,論文として発表した. 2023年度に得られた結果について東京電機大学,京都大学,東京大学,北海道大学の各大学が運営するセミナーにて講演した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の目標は局所志村多様体の整モデルの局所的な幾何構造の決定であった.研究の中で,プリズム上のG-ディスプレイの普遍変形環が構成できることを発見し,その帰結として当初の目標を達成した.プリズム上のG-ディスプレイの普遍変形環は予想していた以上に優れた性質を持ち,局所志村多様体以外への応用も見込まれる.このことから,当研究は「当初の計画以上に進展している」と言える.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は,プリズム上のG-ディスプレイを用いて,特異点を持たない局所志村多様体の整モデルの研究を行った.2024年度は,プリズム上のG-ディスプレイを用いた手法を推進させ,特異点を持つ(より正確には,paraholic level structure を持つ)局所志村多様体の整モデルの局所的な幾何構造を決定する.この目標が達成された後は,局所志村多様体の整モデルの大域的な幾何構造の決定,及び局所志村多様体のコホモロジーへの応用に研究を進める予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度に得られた結果は当初想定していたより多く,研究成果として論文にまとめることに専念するため,特に海外への出張を抑えた.次年度ではまとめた研究成果を推進するために,国際的な研究集会へ積極的に参加し,当該分野の専門家と意見交換をする予定である.
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