ローレンツ多様体上のラプラス--ベルトラミ作用素を用いて記述される連立双曲型偏微分方程式に関する逆問題の研究を遂行した.この方程式に対し重み付きエネルギー評価であるカーレマン評価を確立し,観測データをコンパクトな境界付きローレンツ多様体の境界の一部でとったときの大域リプシッツ型定性評価を証明した.さらに低階項に逆二乗冪の特異性がある係数をもつ空間一次元の波動方程式の波源項決定逆問題に対して大域リプシッツ型安定性評価を証明した. また楕円型方程式の境界値問題に対し,考えている領域に含まれる超曲面上でのコーシーデータから,未知の境界値を決定する境界値決定逆問題の研究に着手した.コーシーデータをとる超曲面を十分大きくとり,さらに未知の境界値にある先験的条件を課すと,従来の一般論では得られなかった大域リプシッツ型安定性が得られることを証明した.
|