無限層ニッケル酸化物で発現する超伝導は、母物質にキャリアをドープすることで起きる。これまで、超伝導の実現は正孔ドープされた化合物に限られており、電子ドープ型化合物の合成報告はまだない。 本課題では、まず正孔ドープ型ニッケル酸化物の合成条件を確立し、還元温度を最適化することで、既報文献より高い超伝導転移温度を持つ試料の作製に成功した。次に、エピタキシャルヘテロ構造による界面電荷移動によって電子ドープを試みたが、ゼロ抵抗は観測できなかった。本課題で実施した研究により、結晶の乱れの少ない試料が実現し、今後、ニッケル酸化物超伝導のさらなる本質的な物性が明らかになることが期待される。
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