研究課題/領域番号 |
22K20351
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高瀬 寛 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (70963990)
|
研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
|
キーワード | 光量子情報処理 / 量子コンピュータ / 量子光学 |
研究実績の概要 |
当該年度は理論研究の面で成果があった。本研究は課題遂行者が提案した、可干渉分岐によるGKP量子ビットの生成を目指している。当該年度ではまずはじめにこの理論提案を論文としてまとめ、学術誌に投稿するとともにarXivに公開した。この論文は光進行波系において任意のGKP量子ビットをシステマティックに生成する方法を初めて明らかにし、かつ生成レートを従来理論よりも飛躍的に高めることに成功している。論文執筆にあたっては、ヨハネスグーテンベルク大学を訪問し、現地の研究者と議論を重ねた。この論文は新しい状態生成プロトコルの提案と実用的なGKP量子ビット生成までの長期的なロードマップを示すことが主眼であった。論文執筆後は原理実証実験に適したパラメータの探索を行った。その結果、可干渉分岐に現れる量子非破壊相互作用のゲインを0.1から0.2程度とすれば現実のシステムに適することが分かった。当初はゲインを1程度とする予定だったため、この発見により研究申請当初の想定より実験の難易度を下げることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べた通り、本研究の根拠となっている理論についての論文を書き終え、さらに実験に即したパラメータを導出できたことにより、本研究の理論面においての必要要素はおおむね達成できたといえる。また実験に利用する設備・器具の整備も進んでおり、光学定盤やレーザーといった最も基本的な要素は立ち上げが完了した。本研究で中心的役割を果たす導波路型非線形光学結晶はすでに発注済みであり、納品されしだい本格的にデータ取得を行える状況である。
|
今後の研究の推進方策 |
今後はこれまでの理論研究の結果をもとに実験を遂行していく予定である。実験の内容は光子検出により非ガウス型状態を生成するというものであり、課題遂行者は大半の部分はこれまでの知見により問題なく遂行できると考えている。実験的に最も注力すべきは、導波路型非線形光学結晶を低ロスかつ安定して長期運用する環境を整えることである。本研究の実験結果は導波路へのカップリングロスをいかに低減できるかが重要である。そのため、導波路に入射する2つの光(波長772nmと1545nm)の両方に対応したアクロマートレンズを特注し、導波路やレンズを微動ステージ上に設置する構想である。また、導波路端面には強い光が集光するため、適切に保護しなければ端面が焼けて実験継続が困難になる可能性がある。このような事態を回避するために、空気中の塵を電気的に集めて除去する装置を導入し、導波路系に組み込む予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
複数個の購入が必要な物品について、予備を減らし最低限の発注を行ったために予算の繰り越しが発生した。繰り越した予算は次年度の消耗品購入費に充てる予定である。
|