研究実績の概要 |
本研究は、研究実施者が考案した「可干渉分岐」という量子力学的な操作の実証を目指すものである。この操作は光(量子的な調和振動子)の波動関数がガウス関数で与えられるとき、それを変位したガウス関数の和に分岐させるものである。当初の提案では、可干渉分岐操作にはユニバーサルスクイーザと呼ばれる実験的に利用の難易度が高い操作を必要とした。そこで研究実施者は、ブロッホメシア分解と呼ばれる数学的分解を利用することで、この分岐操作(または連続的に実行される分岐操作)をユニバーサルスクイーザを用いない形に簡略化した。この成果は学術論文として出版した(Takase et al., npj Quantum Information 9, 98 (2023))。さらにこの簡略化された可干渉分岐操作の実験的実証を目指した。実験では、まず2つの導波路PPLNから生成したスクイーズド光をビームスプリッタで干渉させることで量子もつれ光を用意した。さらに量子もつれ光の一方のチャネルを4台の超伝導ナノワイヤ単一光子検出器に接続し、3光子までの光子数測定を行った。申請者の過去の理論(Takase et al., Phys. Rev. A 103, 013710 (2021))により、干渉に用いるビームスプリッタの反射率を適切に設定することで、さらにはより多くの光子数を測定することで、出力状態の波動関数の分岐をより大きくすることができることが分かっている。最終年度の実験では異なる変位量をもつガウス関数の重ね合わせの観測に成功し、可干渉分岐を実証することができた。この成果については論文執筆中である。
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