本研究の目的は、高波長安定・長寿命・小型の399nmレーザの開発である。このレーザは、イッテルビウム(Yb)原子の量子シミュレータ・光格子時計の小型化のボトルネックの1つとなっており、本研究が達成されれば、量子シミュレータ・光格子時計の可搬化・実用化が大幅に促進される。本研究では、窒化ガリウム半導体を用いた干渉フィルタ型外部共振器レーザ、および、Yb原子気体を用いたファラデーレーザを開発する予定であった。 結果として、干渉フィルタ型外部共振器レーザの開発に成功し、実際に冷却Yb原子の観測に使えることが分かった。 2022年度は、窒化ガリウム半導体をもちいた干渉フィルタ型外部共振器レーザの開発に成功した。このレーザは、小型で高波長安定である一方で、可視光で発振させるとパワーが減衰するという課題があった。この課題解決のために、共振器ミラーをSABOC(Surface-Activated-Bonded Output Coupler)に置換した。ファラデーレーザについては、Yb原子気体を生成するため、真空装置を設計・調達した。本研究で得られた知見の一部を用いて行われた研究が、国際学術誌「Physical Review Letters」に掲載された。 2023年度は、2022年度に開発したレーザの性能評価を行った。すなわち、光共振器やオプトガルバノセルを用いて、周波数純度を計測し、フィゾー干渉計型波長計による周波数安定化を行った。さらに、レーザ冷却装置へと投入して、実際に冷却原子の観測を行った。さらに、本レーザの更なる高性能化のため、最新の接合法である原子拡散接合をもちいた結合ミラーを製作し、同等の性能を持つことを確認した。これらのレーザを用いた成果が論文投稿準備中である。一方、2022年度に設計・調達した原子ビームオーブンも超高真空槽へと接続され、実際に原子ビーム発生に成功した。
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