研究課題/領域番号 |
22K20360
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
佐藤 芳樹 東京理科大学, 理工学部物理学科, 助教 (30962550)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | キラル化合物 / キラリティ / 熱電能 / 電子輸送特性 |
研究実績の概要 |
本研究は、キラルな結晶構造を持つ希土類磁性体を対象とし、熱電能や電気伝導度といった輸送特性の精密な測定を通して、結晶構造のキラリティと結びついた磁性・結晶構造の対称性に保護されたトポロジカルな電子状態に起因する特異な輸送現象の開拓や、その理解を目的としている。 本年度は主にキラルな結晶構造を持つ化合物の単結晶育成および新物質探索と、それらの物質の熱電能や電気伝導度といった輸送特性の測定を行った。キラルな結晶構造を持つ化合物の物質開発に関しては、キラルな結晶構造をもつ新しい希土類化合物GdPt2Bを発見し、論文を報告した。単結晶育成にも成功し、単結晶試料を用いて電気抵抗率、磁化率などの基礎物性を明らかにした。また、関連物質の単結晶育成や新物質開発も行った。 輸送特性の測定系に関しては、測定プローブの改良を行いつつ、微小な単結晶試料で精密に熱電能の測定が可能な測定系を構築した。キラルな結晶構造を持つ金属間化合物を主な測定対象とし、熱電能の温度依存性や異方性を測定することで、キラルな結晶構造の特異性に起因する熱電輸送現象の検証を進めている。六方晶のキラルな結晶構造を有するNbGe2では、特徴的な状態密度のエネルギー依存性を反映した熱電能の増強を観測しており、学会発表を行った。 性能指数の評価に必要な熱伝導率測定系や圧力下での輸送測定系などを開発中であり、今後、キラリティと結びついた磁性・結晶構造の対称性に保護されたトポロジカルな電子状態に起因する特異な輸送現象の開拓に繋げたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、キラル化合物の新物質開発・既知のキラル化合物の単結晶育成を推し進めており、新物質GdPt2Bの発見をはじめとして、研究成果が得られている。また、微小な単結晶試料での測定が可能な熱電能測定系の構築に関しても、測定プローブの改良などが順調に進み、キラルな結晶構造を有する金属間化合物の熱電輸送特性の測定が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
性能指数の評価に必要な熱伝導率測定系や圧力下での輸送測定系などを開発中であり、今後、キラリティと結びついた磁性・結晶構造の対称性に保護されたトポロジカルな電子状態に起因する特異な輸送現象の開拓に繋げたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画を進める中で、結晶方位を定めて試料を形成する必要が出た。装置仕様の打ち合わせと納期の影響で予算執行を次年度として研究を進める。使用計画としては、結晶方位切断機の代わりに、2023年度に購入予定だった信号増幅装置の購入は見送る。また、2022年度に執行予定であった微小電流測定計は2023年度中に発注を行う。消耗品や旅費・人件費に関しては当初の計画通りに執行する。
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