研究課題/領域番号 |
22K20365
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
榊原 由貴 山形大学, 大学院理工学研究科, 助教 (10804510)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | 位相欠陥 / 大統一理論 / 宇宙ひも / ドメイン壁 / 大規模シミュレーション / 重力波 |
研究実績の概要 |
宇宙ひもを境界に持つドメイン壁のようなハイブリッド位相欠陥は、Dパリティなどの離散対称性を経由する大統一理論に普遍的に現れる。しかし、このような多段階の自発的対称に基づくハイブリッド位相欠陥の形成や形態、現在の観測との整合性について、これまで詳しく知られていなかった。我々は、そのようなハイブリッド位相欠陥をシミュレーションにより再現し、位相欠陥のエネルギー密度や重力波などの情報を取り出し、離散対称性を経由する標準模型を超える理論の検証を目指している。 本年度、我々は宇宙ひもを境界に持つドメイン壁を再現するための最もシンプルなモデルとして、異なるグローバルU(1)電荷を持つ2つのスカラー場が相互作用する系に着目した。我々は初めてこのモデルのシミュレーションコードを作成し、数値シミュレーションを実施した。計算スキームは、アクシオンモデルに基づくシミュレーションの先行研究を参考にし、空間方向を2次精度中心差分、時間方向を2次精度リープフロッグスキームとした。支配方程式は、1つのグローバルU(1)対称性を持つ2スカラー場間の繰り込み可能な相互作用を含むクラインゴルドン方程式である。この方程式を、膨張する宇宙と共に拡大する共動座標系上で計算した。 初期分布は、波数空間上でガウス分布となるランダムな初期場とした。本研究では、2つのスカラー場の凝縮温度に階層性をもたせ、先に大きな電荷を持つ場が凝縮するようにした。まず大きな電荷を持つスカラー場が凝縮することにより、宇宙ひもが形成される。続いて、小さな電荷を持つスカラー場の凝縮が起こり、先に形成された宇宙ひもを境界としてドメイン壁が形成される。我々は、このハイブリッド位相欠陥の形態が、スカラー場間の相互作用の強さに依存して大きく変わることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
宇宙論的シミュレーションを行うコードを作成し、名古屋大学の大型計算機「不老」を活用して、ハイブリッド位相欠陥の形成と時間発展を追うことが一通りできた。今後、ゲージ場を導入した際のコードも試作版を作成し、計算機上で動くことを確認している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、1)3次元化、2)ゲージ場の導入、3)MPI並列化を行い、ハイブリッド位相欠陥のエネルギー密度の時間発展と宇宙の時間発展との整合性の解明を目指す。更に、ハイブリッド位相欠陥から放出される重力波の現在のスペクトルの予言を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染症対策のため、国内出張および国外出張を控えていたため、旅費支出が当初の予定額を下回った。有償大型計算機での計算の一部を、無償大型計算機で代用できたため、その他の予算支出が抑えられた。来年度は計算規模を拡大するため、有償大型計算機での計算による支出が増大する見込みである。
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