研究課題/領域番号 |
22K20371
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
高取 沙悠理 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 特任助教 (90963348)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | トリウム229 / 真空紫外光探索 / TES |
研究実績の概要 |
トリウム229はレーザー光で励起可能な極低エネルギーの第一励起状態(アイソマー準位)を持つことから、レーザー光励起による原子核時計実現の可能性を持つ。しかし、レーザー光励起に必要なアイソマー準位のエネルギーや寿命の情報に不定性があるために、レーザー励起実現には至っていない。 岡山大のグループではこれまで、不定性のあるトリウム229のアイソマー準位への直接励起を試みるのではなく、まず放射X線の照射により遷移特性が既知の第2励起準位へ励起し、さらに第2励起準位からの脱励起過程を経て確実にアイソマー準位を生成する独自の励起手法を開発してきた。現在はトリウム229をドープしたイオン結晶にこの励起手法を応用し、アイソマー準位からの脱励起光の探索を行っており、本年度はアイソマー準位からの脱励起光検出を示唆する実験結果を得ることができた。そのため、より実験感度を上げることでこの信号の精密測定を実施することが重要となる。 本年度は他にも、トリウム229をドープした結晶標的の特性評価や、実験のバックグラウンドの評価なども行った。本年度得られたこれらの実験結果からの情報をもとに、脱励起真空紫外光精密探索へ向けた超伝導転移端検出器のデザインの最適化、および、光学装置のアップデートを行い、さらなる実験感度の向上を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当グループではこれまで、トリウム229のアイソマー準位からの脱励起光探索実験を行なっており、本年度はPMTを使った測定により、アイソマー準位からの脱励起光検出を示唆する実験結果を得ることが出来た。そのため、検出器部分のアップデートによる精密測定実施に向けた大きな足がけをつくることが出来た。 また、本年度は新しく作成されたトリウム229結晶標的の特性評価や、その標的を使った実験のバックグラウンドの評価など、超伝導転移端検出器をデザインする上で必要となるデータの取得も行うことが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、トリウム229のアイソマー準位から基底状態へ脱励起する際に放出される真空紫外光を高分解能で探索出来る超伝導転移端検出器の開発を行う。 真空紫外領域に最適化した超伝導転移端検出器のデザインの最適化および制作を行う。また、脱励起真空紫外光探索へ向けた光学装置のアップデートを行う。次に参照光源を元に開発した超伝導転移端検出器が、脱励起真空紫外光観測に十分なエネルギー分解能および時定数を達成していることを実際に評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に行う予定であった検出器の製作を、当該年度に行った実験結果からの情報を反映させるため、次年度に行うことにしたため。
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